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大きな大きな一粒の涙が、溢れた

はじめてみた愛しい人の涙は、最初で最後。

 

荷物をまとめる間 歯ブラシを捨てたとき

不思議と涙は出なかった

 

私の家の洗剤の匂いで思い出してくれるかなぁなんて思うほどに心が穏やかだった

 

昼下がりのやわらかい陽が差し込む少し肌寒い部屋で、新しいコートに身を包んだあの人の泣き声が響く 

 

こんなにも悩ませていたことに気づかなかった私は今まで何をみていたんだろう

ちゃんと見ているふりをして

いつも私のことを見て欲しいが強くかかったフィルター越しだったのかもしれない、と

 

手を握った あったかくて少しごつごつした手

ごめんねよりもありがとうを伝えたくて

泣きながら笑った 

見つめた瞳も涙でいっぱいで、また溢れた

 

最後に好きなところ並べないでよ

なんて突き放してまた好きだと胸が痛む

 

いつも時間は想いより先にくる

気持ちが追いつくのはいつだろう

 

おはようとおやすみは誰にいえばいいんだろう

誰のためにご飯を作ればいいのだろう

誰のためにオシャレをしたいと思えばいいの

 

いつだってRe: あなた だったから

受け取ってくれる場所がなくなってしまって

私の気持ちはふわふわどこへ消えていくの?

 

後悔したくないとあの人の背中にしがみついた深夜3時

明けない夜がないなんて

 

合鍵を握りしめてまたねを言う

車から降りた私は何度も振り返って手を振る

見送る視線をずっとずっと背中に感じて

前を見ながら涙を堪えた

 

いまは交わらなくても

この先また、巡り会えた時

私はもっと私のことを好きになっていたい

あの人ももっと自分の事を好きでいて欲しい

 

そんな日はきっと来る

またね ありがとう